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​小林 顕子 
Akiko Kobayashi

自然の偉大な力を生かした環境再生農業を

通じて、生命(いのち)あふれる美しい地球を次世代へとつないでいく

サスティナブルソサエティーデザイナー

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自然豊かな東北の地に生まれました。子どもの頃、家の周りは水田や畑が広がり、春にはカエルの卵をバケツ一杯に入れて持ち帰り、秋には祖母とともに稲穂にとまるイナゴを捕まえるなど自然の中で成長しました。

大人になりそして母親となって、専業主婦として家事と育児で十数年間過ごす中、子ども達にとって日々の食事は、身体の成長だけではなく「心」の成長にも大きくかかわるのではないかと考え、旬の食材、地元の食材をできるだけ多く取り入れて毎日料理を作っていました。また近所にも田畑があり、地元の生産者の方と話をする機会も多く、漠然と農業について考えることがありました。

そのような中、偶然に一冊の本を手にしました。そこには現在日本の農業が抱える課題と今後どのような方向へ進むと素晴らしい産業へと成長していくかといった内容が書かれており、非常に感銘を受けるとともに、「私にも何かできるかもしれない!」という何の根拠もない心の底から湧き上がる強い気持ちに突き動かされて農業の世界へと一歩踏み出しました。

 

もちろん知識も実績も何もないゼロからのスタートです。まずはいくつかの勉強会に参加してみることから始め、試行錯誤をしていく中で、立命館大学 久保幹教授が開発したSOFIX(Soil Fertile Index :土壌肥沃度指標)技術と出会いました。これまで数値で表すことが難しかった生物性、つまり土の中に存在する微生物の数や活性の度合いを数値化し客観的に評価することで、経験や勘だけではなく、根拠(エビデンス)に基づいた「再現性と収益性」のある有機農業が可能となります。この技術は未来の農業へとつながっていくのではないかと期待し、診断士となりました。

SOFIX診断士の認定を受けて間もなく、実証事業のメンバーとして全国各地の土壌を診断する機会を得ました。その中である耕作放棄地の土壌を分析したのですが、長年にわたって化学肥料や農薬を使用していたため土壌微生物数は検出できる限界値より低く、その他の数値も含めて最低評価の土壌と診断されました。実はその時に比較のためにと、すぐ隣にある雑木林の土壌も採取していたのですが、分析をした結果、土壌微生物数も多く、活性の度合いも高く非常に高い評価となりました。畑の土は最低評価、一方隣接する雑木林の土は非常に高い評価という診断、このことから、自然のシステムというのは人知では計り知れないほど素晴らしいものだということを実感しました。

現在このSOFIX技術を使って、土壌の肥沃度を評価して土壌改良の処方箋をつくり「土づくり」の提案をしていますが、これからさらに自然の偉大な力を生かして環境の再生にも資する「環境再生農業」をまとめ上げ、この未来の農業を通じて、農業だけではなく環境も含め、私たちが健康で幸せに暮らし続けられる持続可能な社会を創り、次の世代へとつないでいきたいと活動しています。

 

幼いころの話に戻りますが、当時水田にはレンゲを植えていました。鮮やかなピンク色の花です。レンゲはマメ科の植物で、大気中の窒素を吸収し固定する作用があるため緑肥として利用されていました。春になると一斉に花を咲かせ、一面にピンク色の絨毯が広がります。そのレンゲの花を摘み、編み込んで首飾りや指輪など作っていたことを思い出します。そしてこの美しい風景を見て、幼い心に強く感じたのは「ここは天国なのではないだろうか?」という思いです。

 

自然の偉大な力と私たち人類がこれまで培ってきた智慧と技術を生かし、生命(いのち)あふれる美しい地球とともに生きる未来を創っていきましょう。

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